仕込めば滑らか

2023/04/27 (木)

先週のことですが,北は北海道,南は九州から,何人もの脳外科医が手術の見学に集まってくれました.
そこで,専門としている顔面の痙攣に対する”ジャネッタ手術”を見ていただいたところ,「先生の手術は操作が滑らかですね」と好評をいただけました.
確かに,同じ手術をたくさん実施していますのでスイスイ進んでいるように見えたかもしれません.
でも実は,「滑らかさ」を支えているのは事前の「仕込み」だと思っています.

手術の仕込みで大事なことは3つあります.
それは,「物の準備」,「心の用意」,そして「見かけの工夫」です.

操作でまごつく時は,器械の「仕込み」が足りないことが少なくありません.
使う器械のスイッチはOK?
止血に使う材料は切ってある?
顕微鏡が無影灯にぶつからない?
そういった「物の準備」を入念に確認してから,「それではお願いしまーす」と言って手術を始めます.

それでも予期せぬ事が起きるのが手術です.
そんな時,すかさず代わりの方法を繰り出せるように,いわゆるプランBを事前に仕込んでおく「心の用意」が大事です.
経験を重ねるとプランBの引き出しも増えますので,自然と多くのトラブルが「想定内」に収まってくれるようになります.

そして最後に「仕込み」がないように「見かけの工夫」を仕込みます(笑).
手品もさんざん仕込みがあるのに.あたかもタネがないように見せかけるから,信じる気持ちが高まります.
「仕込み」を感じさせない順調な進行にスタッフが安心感や信頼感を感じ取れば,それぞれの能力をますます発揮しやすくなるんじゃないかと考えています.

手術はもちろんですが,普段の診察も,そしてプライベートでの料理やドライブなんかも,物の準備,心の用意,そして見かけの工夫によって効率と効果が高まるように感じています.
そして,ボーイスカウトのモットー「備えよ常に」のような気持ちで「仕込み」に気を配れば,結果として動作も「滑らか」につながってくれるのではないかと期待しています.