「見通し」が勇気づける

2023/09/30 (土)

久しぶりに”かんづめ状態”を痛感しました.
9月8日,鳥取での手術を終え.台風13号が接近しているとのことで予定より早い飛行機に変更して無事に羽田に着陸.
ホッと一息ついて品川から常磐線に乗り込んだら,今度は茨城の北部で線状降水帯発生とのバッドニュース.
「運行基準を超えた大雨」で先行する列車が立ち往生しているらしく,特急なのに各駅停車となって,ついに途中の無人駅で完全にストップ.
だったら開き直って車内でゆっくり過ごそうかと思いきや.もうすぐ帰宅と思っていたので,飲み物や食べ物をちょっとしか持っていません.
本来の停車駅じゃないので,列車のドアは閉じたままです.
回ってきた車内販売も「もう日本酒しか残ってません」との冷酷な返答.
そして,とどめを刺す「ご迷惑をおかけしていますが,現在,復旧の見通しは立っていません」との非情な車内アナウンス.
普段は快適に過ごせている列車の座席が,開通の「見通し」が無いと聞いた途端,こんなに苦痛になるということを改めて痛感しました.
幸い,しばらくして後から来る普通電車が水戸まで運行するという放送があり,同じ線路なのにどうしてこの電車は動かせ無いの?とイラッとしながら乗り換えて,何とか家までたどり着けました.

そんな車内で思い出したのが,学校の部活で試合に負けたとき,内容が悪いとグラウンドをいつまでもランニングさせられた時のことです.
たとえば「10周走れ」と言われれば,へとへとになりながらも目標がありますから何とかがんばれます.
ところが,何周走れば終わりなのかがわからないと,同じ10周でも足取りが次第に重くなり,つらさだけがこみ上げてきます(それが昭和時代の「しごき」の目的なのでしょうが).

「見通し」がないと希望の光が見えませんから,真っ暗な世界へと気持ちが落ち込みやすくなります.
顔の激痛で受診される三叉神経痛の方も,あちこちの治療で効果が上がらず,悲壮な表情でお出でになることが少なくありません.
そんな時,原因によっては手術で治りますとお伝えすると,それだけで痛みが和らぐ方もいらっしゃいます.
もちろん,それで治ってしまうわけではありませんが,「見通し」が不安とともに症状も軽くしてくれるということを診療を通じて体感しています.

先のことを見通すことは簡単ではありませんし,間違った見通しで事態をややこしくさせることもあるでしょう.
それでも,つちかった経験や知恵を生かしながら,少なくともおおよその「見通し」を伝えてあげることで,治療への勇気を高めてあげるのも医師の役割だと感じています.