パソコンが視線をかすめ取る

2024/02/05 (月)

以前から,ときどき看護学校で脳外科の講義をさせてもらっています.
医療の主役は看護!,と思っている私にとって,それを目指す若者たちは”金の卵”であり,ぜひ応援してあげたいと意気込んで講義しています.
ただ最近は,教科書がデジタル化されたことでちょっと寂しい思いも感じています.
前まで学生達は,黒板に書いた要点をノートに書き写すため,ほとんど顔を上げていました.
ところが今は,みんな自分のパソコンを見ていて,あまり視線を合わせません.
入力もキーボードやマウスなので,教壇から見ると別な作業をしているようにも見えます.
もちろん,決して聞いていないのではなくて,講義の最後に質問や感想を書いてもらうと,きちんと内容もわかっていて,脳外科に興味を持ってもらえているのでホッとします.

相手にとって「視線」は思った以上に大事です.
「視る」ことが「無い」だけで,関心まで無いように思われてしまうかもしれません.
なんたって「無視」ですから.

パソコンは便利ですが,手で書くのとちがって入力に両手,変換に両眼を使います.
さらに,入力中に別な言葉を発することは難しいので,自然と無口になります.
紙のカルテを使っていたころは,しっかり書いている様子が安心感を与えることもできました.
ところが,同じ記録でも電子カルテだとパソコンの入力が相手に「無視」を感じさせる危険があります.
そこで当院も,診察室ではメディカルセクレタリーに隣に座ってもらい,電子カルテの入力を代行してもらっています.
いつの間にかパソコンに視線をかすめ取られて「無視」とならないように,視線にも気を配ることが電子カルテ時代の診察には大事だと思っています.

ちなみに昔,玉置浩二に似てると言われて調子にのって,よくカラオケで安全地帯を歌ってました.
得意にしていたのは「じれったい」ですが,2番目が「熱視線」でした(笑).