死にたいって言われたら…

2024/03/02 (土)

前回,看護学校での講義の様子をお伝えしましたが,こんな質問も受けました.
「弱気になっている患者から死にたいと言われたら何と声をかけますか?」
ドキッとする質問ですが,実習で患者からそう言われて言葉につまったそうです.
そこで,そんな時には3つのことを考えるように学生達に話しました.

まず一つ目は「真に受けてはいけない」
やるべきことは,死にたい気持ちを手伝うことではなく,それほど苦しい理由を思いやってあげることです.
「私と仕事のどっちを選ぶの」と言われたら,決して2つを比較するんじゃなく,「寂しい思いをさせてごめんね」と言ってあげなくちゃいけないのと似てます.

二つ目は「気持ちは常に揺れ動く」
死にたいというのは,きちんと生きたいという気持ちの裏返しです.
行ったり来たりする気持ちの両面を感じてあげないと,的外れな手助けになってしまいます.

そして三つ目は,「一縷の望みを捨てさせないこと」
病気や治療に「絶対」はありません.
時には思いも寄らないことが起こります.
それは,悪いことだけじゃありません.
人間には未知の治癒力が潜んでますから,もしかしたら治れるかもしれないというかすかな希望まで手放す必要はありません.

そして私なら,きれい事とわかっていてもこう声をかけるかも,と学生達に伝えました.
「そんなにつらいんですね,和らげる方法を一緒に考えましょう」
絶望の淵から患者を引き戻すことは簡単じゃありません.
でも,痛みや不安を少しでも薄めてあげることが私達の大きな役割であることを看護師の卵たちにも分かってもらえたように思います.